PHOENIX-NEXT01構想/プログラムの主旨

 当該構想の主眼はあくまでも子々孫々に渡り蒸気機関車とその時代を支えた交通文化財としての在来型一般客車を保存し、継承すべく企画するものであり、いわゆる「在来型一般客車の置き換え」や「交替」を意図とするものではない。

 今日、社会構造の変化とそれに伴う蒸気機関車及び在来型一般客車の運行環境は、在来型一般客車が全国を駆回っていた時代と著しく異なり、例えば便所・洗面所の汚物・汚水処理からバリアフリーの観点による「車椅子利用可能」を前提とした客扉幅の拡大、列車防護及び保安対策設備等列挙に暇は無い程である。

 その一方で地方自治権の拡大と急速な少子高齢化社会の本格化が、全国的に産業・経済の閉塞感をもららしめ、その多角的な地域構造の転換を迫られている。最も目立つ業類は観光だが、多くの地域・自治体で従前よりの観光経済システムでは既に厳しい状況にあると危機感を募らせ、或は衰退し、或は消滅している中で、「蒸気機関車を地域観光活性化の突破口に」と望み、検討・運動に取り組む地域は増加しついると実感する。

 但し、蒸気機関車の運行実施は「鉄道産業」の持つ閉鎖性と特殊性から先ず、一般的に理解されにくく、故に巨額の費用が多面的に不可欠たらん事から「障壁」と感じている運動家は決して少なく無い。実には蒸気機関車計画には多々方法があり、その予算規模に応じたスタイルでの実施策は多数とは言えないまでも、諦めてしまうものでは無い、のにである。

 他方、蒸気機関車計画と言えば、やはり視点は機関車に重点が置かれがちで、「運行実施」となった場合、機関車はあっても肝心の旅客が乗車するべき「客車」が無い、と言う実情が有る。

 JR東日本管内で稼動可能な蒸気機関車は平成十七年一月現在5機、それに対して使用できる客車は種別不問としても28両で、うち20両は固定編成(更にうち4両は秩父鉄道・3両は真岡鐵道専用)であり、路線や環境に応じて自由に組成出来るものは在来型一般客車8両でしか無く、それも1両は救援車・1両は半室が荷物室で定員が半分となる。つまりJR東日本管内で定型運行以外で蒸気機関車計画を画策した際には、磐越西線(客車7両)・上越線(客車6両)・真岡鐵道(客車3両)・秩父鉄道(客車4両)での機関車と客車の使用を除外した機関車1機と客車7両の体制として構想しなければならず、今後「専用機」を新規に復活・確保した場合、使用できる客車は単純に在来型一般客車の3.5両と言う事になる。

 現状で新規に客車を確保した場合には用途廃止となった14・24系寝台客車の改造で代用しなければならず、この場合徹底した改造を実施したとしても費用的には客車2〜3両の改造費が蒸気機関車1両の復帰検査工事経費と匹敵するほどとなり、且つ構体そのものが重い為に経費を掛けて改造を施したとしても1両当たり30トンを超えてしまい、勾配路線では自ずから編成両数が限られ、即ち旅客定員の少ない列車となり、後々経営的に厳しい数字が後に続く結果となるのである。

 これを旧国鉄管内(JR6社)に拡大すると、機関車10両(JR西日本は本線営業機としてC571機とC56160機の2機のみ計上、D51200機・9633機・8630機・C612機・C622機は構内運転機として分類した)に対して客車43両であり、平均4両の状態で更に悪化する。

 これらの環境を考慮し、今後「本線機の増加」を想定すると、JR東日本からのリースを前提としてもあと1機が限界で、それも「専用客車」が無い不安定計画になる恐れが有り、また残る在来型一般客車をフル稼動した場合、既に部品確保も厳しい老朽化の進行した機材である、存続が困難となろう事は明白であり、また在来型一般客車を活用した多様な企画が遂行出来無くなれば、結果「活躍の舞台」を狭めて行くものとなる。

 以上事由から推論し、今後も地域の独創性と観光活性化を推進する為には新規の客車が不可欠であり、現有機材の改造と経済性・企画の拡張性を考慮した場合、軽量で多様な社会が要求する設計水準の機材を新造する方が得策であると結論した。

 但し、当該機材はその「汎用性」と「拡張性」に最大の主眼が置かれるべきものであって、当然現有する在来型一般客車の淘汰とされるべき存在意義に無い。

 むしろ、現在稼働中の12・14・50系改造客車が各々在来型一般客車以前に耐久年限を迎えている事から、現在実施中の蒸気機関車計画の存続と言う観点からも需要が想定されるものとなろう。


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