鉄道輸送警備隊の任務の内容は前述の通りですが、御留意頂きたい「任務に関する」事柄がございます。

 一は「法制遵守原則」、二に「任務厳正原則」、三に「命令厳守原則」です。

 ボランティアと言えども鉄道輸送警備隊は公法人の活動で、そこには絶対的に公明正大が不可欠で、法律の違反の上に交通文化活動もボランティア活動も成立しません。それが「法制遵守原則」です。

 例えば、SL運転の沿線で暴若無尽な輩が居て、頻りに罵声を飛ばしているとします。この野郎!と憤るのは人間として至極当然ですが、「うるせぇガキっ!」などとやり返して喧嘩になれば、それは警備では無く単なる喧嘩。こちらが「傷害」や「暴行」の現行犯になっては何もならないのです。「お静かに!」とただお願いし、三脚がホーム端や軌道に掛かっていたら「列車往来妨害の恐れがあるので下がって下さい。制止に応じて頂かなかった場合は、通報します!」と指揮者に連絡して所轄警察の臨場を依頼すれば良いのです。

 また、街頭の警戒中にひったくり犯罪に遭遇、「この野郎っ!」なんて襲って来たら応戦体制整えて空手の型なんぞしちゃ駄目。とにかく「賊」の容姿・特徴を記憶しつつ急速に逃げ、指揮者や警察に通報する事です。しかし、被害者がそばでそんな逃げる事も警察に連絡する事も出来ない場合はとにかくボッコボコにしても・・・駄目。先ず「誰だっ!」「止めなさい!」など大声で誰珂し、「自己防衛する!」と自分の立場を明らかにする事です。大抵、大声で誰珂されば悪事を働いた人間とは弱いもので、その恐怖から暴力的になるものです。更に刃物などの凶器もその小心者故の悲しい愚具でしか無いのです。

 応援隊員も駆け付け、取り押さえた被疑者、「この野郎さっきは良くもやってくれたな!」なんて報復しちゃあ駄目。「×時◯分、貴方をひったくりの現行犯で、刑事訴訟法規定の緊急逮捕にて逮捕します。」と明確に告げて身柄を確保します。そして即座に指揮者に連絡、警察に通報して警察官の臨場を待ちます。

 テレビなどで警備員が万引を、或は駐車場で不法に未払い駐車の常習者を捕まえて、「名前は?」なんて聞くシーンがありますが、これは「職務質問」になり違法なのです。更にその時点でロープでぐるぐる巻きにしたり、手錠なんか掛ければ「不当逮捕」に成り兼ねないのです。とにかく一切会話しない。相手の言葉には応じない。「刑事訴訟法で決められているので、会話にも要求にも応じません。」とはっきり言わなければなりません。更に「何だ学生じゃ無いか!」なんて「もうこんな事するなよ」なんて、勝手に釈放しても駄目。取り調べは司法警察員の仕事で、その判断は裁判所の仕事なのです。

 「最近は物騒で、警備には護身用具が必要なので、警棒買って来ました。」も駄目。市販されていても、武器は武器、警備員だって本当は各都道府県の公安委員会に届出て認可された「警備業法」等規定の護身用具以外を携帯する事は違法で、それも施設の防犯警戒や金銭等貴重品の輸送など、明確にその物品・施設敷地の所有・管理権者から看守権の委託を受けた場合にのみ認可されるもので、不特定多数の市民が往来する場所(駅も含む)などでは使用どころか携帯も違法です。故に「自警団」の皆さんが携帯していたとしても、鉄道輸送警備隊では原則として一切の護身用具の携帯を禁止しているのです。(武具など使わずに簡単に出来る護身法も沢山ありますので。)

 任務の厳正も上に含むものですが、常識の範囲で行う限り、違法も任務不厳正もありません。同時に「今日は風邪気味なので」と早めに退務したい場合は指揮者に「今日、風邪っぽくて」と一言断われば良いし、それ以前に無理せず事前に「今日は休務します」と連絡すれば良いのです。(無理言う事もそうそう無いですから・・・それでも無理強いされたら執行幕僚長に直接メール!直ぐに指揮者に「おー××君、君自分の隊員何だと思っている訳ぇ?それで勤まる?武将がさぁ???」と恐怖の「事実確認」電話が飛びますので。)

 勝手な行動は取らない、しかし予想に反してアクシデントが起こるのが現場の常です。事前に想像される限りの事例を上げて、指揮者の決済を待たなくても良い様にシュミレートする事が大切です、その為に分析・情報調査チームがあるのですから、指揮者ばかりでは無く、担当の隊員個々が「臨兵闘者皆陣列在前」の気合で望む事が大切です。何より誰も怪我しない・させないが鉄則です。

 と、固いばかりの「私設軍隊」みたいですが、勘違いされません様に・・・鉄道輸送警備隊はあくまでも「接客サービス」の専門チームで、基本は爽やかな笑顔。です。

 鉄道輸送警備隊では制服も規定のものがあり、それも正装・略式・出動時と種類があります。(尚、第二機動警備隊特科中隊の新選組観光案内活動のみ和服&新選組隊服での任務を推奨しております。)しかし、どれも基本はワイシャツにネクタイ(夏は開衿)で、白手袋に制帽、まるで何処かの船乗りさんですが、御客様や市民の皆さんが畏怖し嫌悪を抱く様な不粋な陸軍の戦闘服みたいのは絶対厳禁で、「制服・制帽に於ては、鉄道輸送警備隊の任務は広く一般市民に接し、その鉄道等公共交通機関の利用を促進し或は市民に安全明朗な地域社会の実現を目指すもので、一般市民が畏怖し或は不安を覚え、若しくは嫌悪の感情を抱くものであってはならない。(別記・所謂アーミー調等の陸軍戦闘服等は著しく市民に畏怖と不安を与える虞れがあり、また動き易い分厳正な執務遂行とは受取られないので、これらに類するものは厳禁とする。)」(規約第二十九条の二)「制服に於ては接客に適応したものとする。」(同条の三)とされ、制服の上からも「サービススタッフですよ」と明記しております。

 武装して威圧して睨みを利かせて町中歩き、悪さ押さえるだけなら暴力団だってやっている事、何も特定非営利活動法人が全くの不採算で実施するものでは無いし、二十年も我慢して罵倒と悪口言われて尚、続ける必要もありせん。また、自主運行の団体専用臨時列車の為だけの警備隊なら規約作って迄やる事も無いのです。

 全国的に治安の悪化・凶悪犯罪被疑者の低年齢化と日常化が急速に浸食する日本で、安心して乗れる鉄道、安心して使える駅、安心して暮らせる街を実現する為には、警察官ばかりに文句付けて押し付けてのみでは無く、やはり市民レベルでもきちっと「生活安全」を考え、その行動が出来る様にしたい、SL運行で経験したまさに「責合いの合戦」を経験した私達だからこそ、御提案できる「安心の暮らし」があるのだ、と確信して、鉄道輸送警備隊は活動しているのです。

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