私達の目指す「人・地域・交通の共和した社会の実現」とは、決して「経済性」「効率性」「採算性」では得られないものです。

 勿論、その事業や現実の展開の中では経済性・効率性・採算性は極限迄追求して、より充実したものを創る努力は不可欠ではありますが、「経済効率主義」「採算主義」の中で何時しか都市の過密・地方の過疎を促進してしまったのが事実です。

 交通は移動の手段ばかりではありません。例えば、列車は毎日職場や学校に通う為だけのものではありません。時に故郷の懐かしい人や風景に帰ったり、海水浴・登山・ピクニック・散策・・・愛する家族や、気の置けないお友達、職場や学校の仲良し達との素敵な思い出を「記憶」する為に、その時間を得る為の「ミラクルマシン」でもあります。

 ところが、我国では多くの交通機関は「移動装置」で、その「移動」を楽しむ風潮はなかなか定着しませんし、それを楽しむ仕掛けもありません。

 それが「採算性・効率性」の結果によるものと断じます。

 結果、「コストには優しいが人に優しく無い」旅を強いてしまっているのではないでしょうか?

 私達交通文化連盟の最大の目標は、日本最大最速最美の蒸気機関車・C62機による蒸気機関車列車の永久的運行の実現と、その技術・精神の後継継承の為の仕組創りです。

 

 それは単にそのC62蒸気機関車だけが「神棚」では多くの蒸気機関車企画で実現している通りで、私達が情熱を傾けて必死に追い掛ける必要も価値もありません。では、何故?と言われれば、この機関車が日本で一番「手間の掛かる」機関車だから、であります。

 一番手間が掛かる=高度な専門的技術が不可欠な機関車を運行し、保守・修繕し、永く走らせる事が出来れば、勿論そのまま直ぐに、とは参りませんが、D51機も9600機も・・・蒸気機関車のみならず、客車・電車・ディーゼルカーも永くその姿と技術を止める事、その応用が一番容易だから、なのです。

 更に、過疎のローカル線沿線は人口が少ないから特色や名産や人情が少ないのかと言えば、そんな事は無いのです。都会で生れて育った者でも、緑深い渓谷や雄大な山嶺、絶景の海岸に安らぎを感じ、知らない人との触れ合いは暖かい感動を「消えない記憶」に刻むものです。

 そんな日本に生きているからこそ、もっと日本を歩いて頂きたい、その「歩く切っ掛け」を地域と共に構築したい、もっともっと人と出会って欲しい・・・それは遠くの村の事ばかりでは無く、普段の生活圏にも沢山ある筈です。

 都市には都市の人がより良い「交通環境」があり、地方には地方のより良い「交通環境」があります。その交通環境は実はハードだけで実現するものでありません。どんなに高性能のコンピューターだって、使い良いソフトが無ければまさに「ただの箱」です、そのハードとソフトを調和させながら、時に快適に、時にロマンティックに、時に幻想的にと幅を広げる事が出来れば、「移動装置」は「素敵な時空」になれる筈です。

 高速度交通時代にあって、スピードに人間らしさをついつい落してしまっている昨今、軌道はもっともっと素敵な時間につながっている、道はもっともっと人の笑顔を秘めている、航路はもっともっと出会う人に向かっているのです。

 交通文化連盟の明日、そしてその先へ・・・

 それに乗る事が楽しみな、そして優雅で叙情に溢れる「時間」の実現。

 え?これは・・・私達が言い出した事では無いのです。

 十数年前に小樽の国鉄マン達が「C623機」で、百年以上も前に、ジョルジュ・ランベール・カシミール・ナゲールマケールスがそっと「オリエントエクスプレス」で教えてくれた「夢の方程式」をなぞっているだけなのです。

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