男達の夢「開陽」の終焉地

 戦国期から松前氏が統治していた街で、古くから漁業基地として栄えて居た江差は、戊辰戦争では激戦の土地となった。

慶応4年8月19日(西暦1868年10月4日)に江戸を脱出、10月20日(西暦12月3日)渡島・鷲ノ木海岸(北海道森町)に上陸し、五稜郭占拠以後に土方歳三義豊指揮の部隊に襲撃され、守備の松前藩部隊は撤退している。

11月5日(西暦12月18日)に松前城を落とした土方隊は江差に入り、その支援で榎本和泉守武揚等幕軍主脳が「開陽」で江差に入った直後の11月15日(西暦12月28日)、夜半から急変した天候で艦が流されて座礁した。その時、榎本や土方、大鳥は上陸して艦には中島三郎助達わずかの乗員が残るのみだった。海底の岩盤が平坦で、岩礁の多い当時の江差港で座礁する事は、木造船の開陽にとっては致命的で、砲術士官出身の中島は側舷の艦砲勢射で離礁を図ったが急速に変化する風向きに翻弄され、艦体は岩礁に引き裂かれて沈没した。

 新政府による恭順交渉で開陽を引き渡せば全員の助命をする、と言わしめた程の脅威だったのは、この当時としては日本唯一の「フリゲート戦艦」であり、日本最強の大砲26門、日本最大2590トン・全長72.8メートル・全幅13.4メートルを誇り、大砲の射程距離と砲装は「甲鉄・東」を上回った、まさに国際的にも最強級の戦艦だった故である。

 その姿は飾り気の無い漆黒で、しかし気品に溢れる実に美しい船体をしている。榎本のみならず大洋を征く若武者の如きこの戦艦に夢を馳せるは、今日の私達も理解出来るものである。

 榎本達がオランダ留学生として派遣され、設計から施工まで立ち会った「夢」の戦艦は、ネーデルランド(オランダ)ドルトレヒトのヒップス造船所で慶応2年10月25日(西暦1866年12月1日)に完成し出航してわずか2年の活躍だった。

 軍艦には「丸」は付けないのが船乗りの常識だが、「船と言えば何とか丸」と言う市民感情からか、多く「開陽丸」と呼ばれている。

 今日、沈没地点から少々離れた海岸に江差町が再現した開陽がある。男達は百年後の蝦夷と日本を折々に語っていたと言う。その燃え滾る情熱と夢と言う「種」は今日、この美しい船体とこの大地に映る波が咲き散る如く、静かに、しかし脈々と「華」として咲いている。

 明治2年4月9日正午(西暦1969年5月20日)に乙部(檜山支庁爾志郡乙部町)海岸に上陸した津軽・松前・毛利・福山・越前大野各藩による西軍第一陣1500名は江差に殺到、北蝦島政府江差奉行・松岡四郎二郎が指揮する守備隊は艦砲射撃と圧倒的物量で迫り、4月11日(5月22日)撤退を余儀無くされ江差は西軍に制圧された。

 江差町は檜山支庁も置かれている人口1万人の街で、我が国三大追分の筆頭民謡「江差追分」の発祥地としても有名。維新後から昭和初期には鰊漁と北前船の基地として大いに栄えた。その名残が街に今も数多く残っている。

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檜山支庁檜山郡江差町江差町役場/01395-2-1020

江差観光協会01395-2-4815


開陽(開陽丸青少年センター)(定休月曜と祝休日の翌日但し4〜10月は無休・営業9〜17時)01395-2-5522

(江差駅より徒歩20分又は函館バス5分「鴎島入口」「姥神町フェリー前」)※入場料700円・小中高生300円

 精密再現されたドラマのロケセットにも多用されている開陽。幕臣達の浪漫を体感!中には引き揚げられた諸資料が展示されている。尚、開陽の座哨地点はこの場では無く、町役場側湾内である。

私は徒歩での開陽見学をお勧めする。駅から国道227号へ降りて、国道沿いにとぼとぼと歩く真夏の日、茂尻の丘を越えて行くと先に開陽が!自然に滂沱の涙が溢れ、この船の美しさがしみじみと解ったからである。


幕末と鰊と追分の街・江差は歴史的建造物が沢山あります!

江差町会所会館(営業4〜10月の毎日9〜17時)01395-2-4815

(江差駅より函館バス「中歌内」徒歩5分)

 旧江差町役場。1845年築造と言う文化財。2000年に移転改築修繕しました。入場無料!

旧檜山爾志郡役所(営業4〜10月の毎日9〜17時)01395-4-2188

(江差駅より函館バス「中歌内」徒歩5分)※入場料300円

 明治20年に檜山爾志郡役所兼江差警察署として築造された現存する道内唯一の郡役所庁舎で、本格的木造洋館として美しい姿を今に留めている。


江差は観光の宝庫・奥尻島への玄関です。飛行機もありますが、やはり船で。更に大自然をゆったりと満喫出来る心配りも数多い。

かもめ島

 開陽丸センターの付近はかもめ島で、夏には海水浴で賑わい、散策路も整備されている。


江差には函館か木古内からJR北海道・江差線か、バスがある。奥尻島への玄関口でもあり、夏には観光客で賑わっている。

JR北海道江差線 木古内・函館〜江差JR北海道 JR北海道函館支社

→上野駅から寝台特急「北斗星」「カシオペア」利用で函館駅乗換で江差線・木古内駅で江差行乗換で江差駅/上野駅から東北新幹線・八戸駅から特急「白鳥」木古内駅で江差線で江差駅。

函館バス 函館〜江差間2時間10分1830円0138-22-8111

(※函館バスでは、江差〜松前間バス便も有ります。2時間2290円)

東日本海フェリー江差〜奥尻間2時間2100円01395-2-1066


江差と松前はセットで周遊

 江差と松前はセットで巡ると便利です。青春18きっぷシーズンならば江差へ先行して、後に松前へ・・・日本海の壮大な雄々しさと、厳しい自然の中にこそ素敵な発見があります。

 松前からの函館行バスは木古内駅も経由しますから、鉄道・バスと選択肢も豊富です。


幕末機動警察隊・新選組